「いい経験」意識変わった 法律考える機会に 審理尽くせたか…不安も(産経新聞)

【裁判員制度開始から1年】

 刑事裁判に国民が参加し、裁判官とともに判決を決める裁判員裁判は21日で制度開始から丸1年を迎える。昨年8月に東京地裁で第1号が行われて以降、今年3月末までに全国で444人に判決が言い渡され、3594人の国民が裁判員・補充裁判員として参加した。大きなトラブルもなく、裁判員経験者の記者会見や裁判所によるアンケートでは、好意的に受け止める意見がほとんどだ。一方で課題も浮上しつつあり、制度の見直しに向けた議論も少しずつ始まっている。

 ■裁判員は「意義ある」

 制度開始から1年を迎えるのを前に、あらためて裁判員経験者に感想を尋ねた。返ってくるのは意義深かったとする答えばかりだ。

 50代の男性会社員は「強盗致傷罪の量刑が意外に重いことを知った。本当にいい経験ができた」。別の男性会社員(34)は「法律や、法を守ることについて考える機会になった。いろいろな立場の人が意見を出し合うことに意義がある」と振り返った。

 昨年末までの裁判員裁判計138件で裁判員を務めた人を対象にしたアンケートでも、参加した感想について96・7%が「よい経験と感じた」と回答している。選ばれる前に「やってみたい」と思っていた人は全体の30・1%にすぎなかったことを考えると、実際に参加することで意識が変わった人が相当数にのぼることを示している。

 一方で、経験者の1人は取材に対し、「審理を尽くせたか今も不安になる。被告が犯行時、どう考えていたのか、本当に結論に誤りがなかったか」と打ち明けた。真剣に取り組んだ裏返しとして、重責を感じている様子も浮かび上がる。

 ■裁判官の気遣い

 世間知らずと批判されることもあった裁判官。だが、こうしたイメージも裁判員制度をきっかけに変わりつつあるようだ。

 ある裁判員は「裁判官といえば偏屈で一般常識がないイメージだったが、われわれと変わらない目線で世間を見ていると安心した」と振り返った。アンケートでも83・1%の裁判員が「評議は話しやすい雰囲気だった」と回答。実際の議論も、75・8%が「十分に議論ができた」としている。

 ある裁判官が「裁判員に積極的に意見を言ってもらい、充実感を感じてもらうための努力は惜しまない」と話す通り、裁判員への気遣いは評議だけにはとどまらない。当初はマスコミや傍聴人の接触を排除するため、裁判長自ら裁判員を最寄り駅まで送る配慮もあったという。

 体が不自由な裁判員の車いすを裁判官が押し、評議室と法廷を行き来する姿もみられた。裁判所に対する全体的な印象も、裁判員の77%が「適切だった」と回答。裁判官の努力はおおむね実を結んでいるようだ。

 ■選ばれず不満

 逆に不満の声が目立つのは、候補者として選任手続きに参加しながらも選ばれなかった人たちだ。

 「候補者になっただけでも負担。制度を変えてほしい」「選任されるか当日にならないと分からないのに、あらかじめ3日間も休暇を取らなければいけないのは不合理」…

 選ばれなかった人で裁判所の印象を「適切だった」と感じたのは54・5%。裁判員経験者の数字を20ポイント以上も下回る。呼び出し人数を減らすことで不選任を減らすことはできるが、呼び出し人数は制度開始当初から現在までほとんど変わっていない。今後、改善の余地がありそうだ。

 また、補充裁判員として参加した人たちの満足度もやや低い。「裁判員が評議しているとき疑問が次々とたまった」「どうせなら積極的に話し合いに参加したかった」など、意見を自由に言えないストレスが背景にあるとみられる。

 補充裁判員をどこまで議論に参加させるかは、裁判長の判断に委ねられているが、評決には加われない。ある経験者は「裁判員を6人と限らず、6人以上として補充裁判員も加えることも可能ではないか」と提言している。

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